伯爵の関心

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「えっ、そうでしたか。いや、それは気が付きませんでした。そんなに噂になっているのですか」 「シャイン伯爵は、なぜご友人の結婚についてそこまでお気にかけられていらっしゃるのですか? 官僚として次期王妃の選別にご懸念があるということでしょうか」 「え、いや、まぁ、そうですね。ミス・カンブルランは子爵のご令嬢ですから、その、良い方ですからお人柄としては問題ありませんが、階級から見ると……」  ピエールは畳み掛けるエマに対して返答に窮している。 「殿下はご結婚そのものに対してあまり関心がないというお噂もあるようですけれど」 「えっ、それはどういうことでしょうか」 「アルトワ伯爵は、その」  エマはここに来て躊躇(ためら)った。  ピエールがサンドリーヌに向ける関心の本意を探ろうとして出した前置きに過ぎなかったが、結果的に彼の友人のことを下世話な噂話のように話題に出したことには変わりない。そんな自分の浅はかさに今更ながら少し恥じ入った。  しかし時間がないための焦りがそれを抑え、友人であるピエールなら殿下の事情くらい既知のことだろうと考えて、エマは後を続けた。 「結婚そのものに関心がおありではないのは、そもそも女性に対しての関心がないからで、アルトワ伯爵のご関心は、その、男性にあると」  ピエールは虚を突かれた。  エマの言葉を理解するのにたっぷり30秒はかかった。しかしそれでも言葉の意味を実態として理解するにはそれだけでは足りなかった。  このレディは何を言っているのだ?  アルトワ伯爵の関心が男性にあるというのはどういう意味だ?
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