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「あの、アルトワ伯爵は、女性ではなく男性を愛する方というお話です。お若い頃にご夫人の方々と遊ばれていらっしゃたことも事実なようですけれど、そこでさるご夫人のご愛妾に出会われて、そのご夫人と共にそのご愛妾を大層可愛がったとか。それからアルトワ伯爵は年上のご夫人ではなく、男性の方へご興味が向かれたと……」
ピエールは察せられる続きの言葉をエマの代わりに継いだ。
「つまり結婚のお相手はただの飾り、その噂を隠すためのカモフラージュということですね」
ピエールはアルトワ伯爵がサンドリーヌを選んだ理由にようやく合点がいった。
妻として扱わずとも不満を言わない娘を選んだのだ。夫が男性を相手にしていることを知っても、それに反抗しないような娘を。
ピエールが不在だった三年の間に、まさか友人がそのように様変わりしていたとは考えもつかなかった。
「それで、ミス・カンブルランはカモフラージュとしてのお眼鏡に適ったと、そう噂になっているのですね」
「おっしゃるとおりです」
「それを私が気にかけていると?」
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