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「ミス・カンブルランに同情の目を向けているのは伯爵だけではありません。噂をしている者たちのほとんどが、まだ若く純真なミス・カンブルランを憐れんでいらっしゃいます。16だと言うのに女性としての楽しみを一生奪われてしまう。紳士に愛されて自分も愛する喜びを感じることなく、王妃としての義務だけを果たさなければならないと。未来の宰相に申し上げるには憚れますけれども、我が国の王妃様はただお世継ぎを産むだけの存在でしかないではありませんか。ミス・カンブルランは王の寵愛すら受けられず、もしかしたらお世継ぎを産むことなくその責任をお取りになり、その地位に耐えねばならないわけです。私もお可哀想だと思います。シャイン伯爵もそのことを懸念されていらっしゃるものと考えておりました」
エマの話に、ピエールは黙って頷きながら耳を傾けていた。
アルトワ伯爵の求婚は、アランとミス・カンブルランの仲を割くどころの話ではなかった。
アランは知っているのだろうか?
いや、ミス・カンブルラン本人は知っているのだろうか?
「ミス・ヴァロワ、そのことをミス・カンブルランは……」
ピエールが言い終わらぬうちに、その心配を引き受けて答えた。
「ご存知ですわ」
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