時は短し、恋せよ伯爵

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「おー! アランか! すぐに入ってもらいなさい」  アルトワ伯爵の顔が華やいだ。  アラン? いつの間にそう呼ぶほど打ち解けた仲になっていたのだ?  ピエールは訝しんで片眉を上げた。 「こんばんは。アルトワ伯爵」  アランはいつも通りの朗らかな笑顔を見せて軽く頭を下げた。 「ピエールも来ている。さあ、飲もう!」  アルトワ伯爵はアランの背中に手を回していそいそとソファへと連れて行く。 「やぁ、ピエール。君も来ていたのか」  アランの笑顔は穏やかだ。  サンドリーヌへ想いを寄せているはずのアランが、その想いを奪い去ろうとしているアルトワ伯爵本人に親しく言い寄られていて、それをアランがどのように感じているのかを案じていたピエールだったが、こんなにも仲を深めていたとは思いも寄らなかった。 「やぁ、アラン。最近会っていなかったな」 「そうだよ、どうしていたんだピエール。仕事が忙しいのか?」 「まあ、そうだ」  実際、帰国してからと言うもの、不在にしていた間に起きた様々な国事や政策に関して情報を吸収し整理しなければならないことが多く、それらを含めて行う官僚たちとの協議や資料作りにも追われていた。  ピエールは優秀な官僚であり、既に大臣や上級官僚からかなりの信頼を得ているため、帰国した直後からもひっきりなしに相談を持ちかけられ、こなさなけらばならない職務に加えてやらねばならぬことが山のようにあった。
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