アルトワ伯爵からの招待状

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「シャイン伯爵、ベルタン侯爵、お待たせしてしまって大変申し訳ありません。急な用件はようやく済みました。あ、ミス・ヴァロワ、ようこそおいでくださいました。ごゆっくりとお寛ぎください」  カンブルラン子爵はピエールとアランに軽く頭を下げて挨拶をしたあと、エマへは胸に手をあてて丁寧な礼をした。 「どうぞ、私の書斎へ参りましょう」  カンブルラン子爵はピエールとアランに頷きかけて書斎へと誘導した。  礼儀を失して無言で立ち尽くしたままであったサンドリーヌは、三人の出ていく姿を目で追ったあと、視線をエマへと向けた。  サンドリーヌの視線を受け止めたエマは心配そうな表情を浮かべて言った。 「ミス・カンブルラン、ご気分がすぐれないのでしょうか?」  その言葉で呆然としたままであったことを自覚したサンドリーヌは慌てて気を取り直した。 「申し訳ございません! 大丈夫です。ミス・ヴァロワ、ようこそおいでくださいました」  そう答えてサンドリーヌはエマの対面のソファに腰を掛けた。 「先日の舞踏会でお会いしたときに、自邸へご招待すると申しておりました件でお伺いいたしました」  エマは早速本題に入った。
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