ヴァロワ邸でのお茶会

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 ただレディをエスコートして踊るだけで愛を向けているなど、どうしてそう感じていたのか。  周囲に褒めそやされ注目の的になっているだけでカップルになっているなどと、どうして考えたのか。  エマは生まれて初めて自信が揺らぎ、恥ずかしさで消え入りたいと思った。  しかしサンドリーヌはアルトワ伯爵に求婚され、王の承諾を得れば妻となる身だ。  王太子の宰相となるシャイン伯爵が、その王太子の相手を奪うなどということはしないだろう。  そう頭でわかってはいても、シャイン伯爵の人を惹きつけてやまないあの魅力が、サンドリーヌの心を奪い、サンドリーヌのあの純真な可愛らしさが、レディに興味を抱かない伯爵の氷を砕かない理由にはならないとも思った。  伯爵の才気と力さえあれば、二人でこの国を抜け出して外国へ行ったとしても困ることはないだろう。  二人は既に愛し合っていて、逃げ出す段取りを計画している最中かもしれない、そう思い悩むほどにエマは嫉妬に悩み、思い詰めていた。  今日のお茶会で、なんとかサンドリーヌの心を覗き見ることができないか、そう思いを巡らせていた。
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