ヴァロワ邸でのお茶会

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「ミス・カンブルラン、アルトワ伯爵のお噂はただのお噂にしか過ぎません。ベルタン侯爵と親しくされていてもそういったご関係ではないことが、その証明になるとお考えになりませんか?」  エマがサンドリーヌに配慮した言葉をかける。 「そうね! そうだわ! 以前はご夫人の方々との火遊びがお噂になっていらしたじゃない、噂なんてそんなものよ」  アンナが嬉々として両手を合わせた。 「そう。根も葉もない噂はごまんとあります。王太子殿下ともなれば、殿下をよく思わない勢力がそういった悪意のある噂を広げていてもおかしくないことです」  エマがサンドリーヌに笑顔を向けて言った。 「ミス・ヴァロワ、お気遣いありがとうございます。不遇な結婚生活を耐えるしかないと覚悟を決めておりましたが、アルトワ伯爵が私をお選びになった理由が噂に上っているようなことではなけば嬉しいと思います」  サンドリーヌは力ない笑顔でエマに応えた。 「ミス・カンブルランはアルトワ伯爵のあの噂以外にお気にかけていることがあるのですか?」 「いえ。その、結婚すること自体あまり嬉しくないものですから」 「何を言っているの? サンドリーヌ! 良い結婚ができるのなら時期なんて関係ないじゃない。選り好みしていると行き遅れておしまいになるわ!」  マリーが声を上げた。 「マリー、私は結婚しないままでも構わないと考えているのよ。それくらい結婚すること自体が嫌なの」 「マリッジブルーというものね。ローシェ夫人もそうだったじゃない? 決まってからというものあちこちに愚痴をこぼしていらして」
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