ヴァロワ邸でのお茶会

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「あれは酷かったわね。それが今では『ローシェ夫人』と顔に書いて歩いているような態度を見せて」  マリーの軽口にアンナが乗った。 「アルトワ伯爵は派手な遊び好きのお方ではいらっしゃるけど、お優しい方じゃないの。きっと素晴らしい旦那様になるわ。ベルタン侯爵もね」  そう言うとマリーはアンナの方を見て片目をつぶった。 「ベルタン侯爵は派手でも遊び好きでもありませんけど、お優しい方であるのは間違いありませんわ。なんでもご自分の領地の農地経営に熱心なお方だそうで、そんなところも素敵だわ」  アンナは気恥ずかしさを感じながらも、好きな男性の魅力を話したくて仕方がない様子だ。 「ミス・ヴァロワ、シャイン伯爵は誰もが素敵な方だと絶賛しておりますけれど、ミス・ヴァロワにしかお見せしない魅力はどのようなところなんですの?」  マリーは無邪気に問う。 「え、えぇ、友情に篤いところでしょうか。ご友人が困っていらっしゃると放っておけず、寝る間も惜しんでご尽力されるお方です」  エマが答えると、サンドリーヌが割って入った。 「そのようですね。あれほどのお方がここまでお気遣いをしてくださるのかと驚いてしまいます。本当にお優しい方です」  エマがサンドリーヌの言葉に反応した。 「ミス・カンブルランは近頃シャイン伯爵とお親しくしていらっしゃるようですね」 「お親しいというほどのことはありません」  サンドリーヌは笑いながら応えた。 「ベルタン侯爵のお気を惹かれた次はシャイン伯爵ですか? 殿下のご寵愛を受けられる身でありながらお忙しいことですね」
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