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突然のエマの言葉に、一同は静まり返った。
皆の反応を気にすることなく、エマはいつもと同じ冷静な語り口でさらに続けて言った。
「ミス・カンブルランは紳士の好意を惹く術に長けていらっしゃるのかしら? あまりそのようなことを頻繁になされないほうがよろしいかと思います。周りからどういった目で見られるかわかりませんもの。王妃様になられるのですから、お気を張っていらしたほうがよろしいと思います」
エマはそこまで言うと、紅茶を飲み始めた。
三人はしばしエマのその動作を見守っていたが、マリーがその静寂を破った。
「ミス・ヴァロワはサンドリーヌのことを心配しておっしゃられたのよ。そのように見受けられる行動は慎んだ方がよろしいと、教えてくださったのよ。ハッキリと言ってくださるなんて、なかなかできることではないわ。素敵な方とお近づきになれて嬉しいわね」
「えぇ、ミス・ヴァロワ、ありがとうございます」
サンドリーヌは驚いて言葉に詰まっていたが、マリーのその解釈に納得しようとした。
「ふふ、ミス・カンブルラン、あなたにお会いできて舞い上がってしまったのかしら。あなたとお近づきになれて嬉しいのは私の方です」
エマの笑顔は全く変わらない。いつもと同様に慈愛に満ちた心からの笑顔だ。
しかしサンドリーヌは以前と同じようには感じられなかった。それがどういった変化なのかは説明できないが、どこか以前とは違って感じられたのだった。
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