ベルタン邸への訪問

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「アルトワ伯爵はミス・カンブルランを見初めて求婚したわけではない。ただ従順に従い、不満を口にしない娘なら誰でもよかったんだ。アランがミス・カンブルランに好意を抱いていることを知って、牽制するために近づいたのではないかと思う。彼女から遠ざけようとしているのだよ」  ピエールはアルトワ伯爵の真の想い人がアランであることを隠しながら、アランをアルトワ伯爵から遠ざけられないものかと考えていた。  アルトワ伯爵の想いが成就することはないだろうから、アランの拒絶に対してどういった反応を見せるのかを予想すると、アランに幸福な未来が待っているとは考えられない。  アルトワ伯爵がアランに夢中になる前に、二人を引き離した方がいい。  アランへの興味が失せてさえしまえば、相手はミス・カンブルランでなくてもいいわけだから、アランとミス・カンブルランは晴れて一緒になることができる。  ピエールはその作戦を練る前に、まずはアランの気持ちを確認しておかなければならないと考えた。 「お前はミス・カンブルランを愛しているのだろう? アルトワ伯爵から彼女を奪い取るくらい考えてみろ」 「そんなことできるわけがないだろう」  アランは戸惑いの声を上げた。
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