ベルタン邸への訪問

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「むしろ僕が彼女の気を惹こうとする方が悪い結果になりかねない。僕は確かに彼女を気にかけてはいるけど、王太子から奪ってまで妻に娶ろうとは考えていない。それにミス・カンブルランが僕に好意を寄せているとも思えない。彼女はまだ若く、紳士には興味がない様子だからね」  焦りで額が汗ばむほどのピエールに対して、アランは涼しい顔をしていて冷静だった。 「それでは、ミス・カンブルランがアルトワ伯爵と結婚してもいいと言うのか?」 「だから、いいもなにもないと言っているんだ。僕には関係のないことだ」 「アラン、つまりお前はまだアルトワ伯爵と仲良くするつもりなのか?」 「ははは。ピエール、どうしたんだ、お前の友人だろう? 友の友は友だ。アルトワ伯爵とは楽しい時間を過ごしている。またお声をかけていただいたら、それをお受けしない理由はない」 「裏の狙いがあってでもか?」 「裏の狙いって一体何だよ。牽制か? そんなもの必要がないのに? アルトワ伯爵は純粋に友として楽しんでくださっているように思えるが」  アランはにこにこしながら答えた。  ピエールはこの会話を続けることを諦め、アランの農地経営の方へと話題を変えた。
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