【プロローグ】早苗はサンドリーヌの夢を見た

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【プロローグ】早苗はサンドリーヌの夢を見た

 早苗は眠っていた。  結婚して二年、夫からのモラハラに耐えながらも浮気をされ、DV(ドメスティック・バイオレンス)まで受けた早苗は、その日は突き飛ばされたときの打ちどころが悪く、植物状態になるほどの傷を負った。  それからの早苗は、生きてはいるが眠ったままの状態になってしまった。  早苗は夢の中を生きていた。  その夢の中はどうやら異世界とでもいうような別の現実世界のようだった。  どういう仕組みなのかはわからないが、早苗はその世界で目覚め、立って歩くことができた。  異世界での早苗は子爵の娘で、サンドリーヌ・カンブルランと言う16歳の娘だった。  家庭教師を困らせながらも勉学に励み、マナーを身に着けながら、社交界デビューを心待ちにしている貴族の令嬢だった。  サンドリーヌは社交界デビューが間近に迫ったある日の午後、日課の散歩をしているときにうさぎを見つけ、追いかけた際にいつもとは違う道に迷い込んでしまう。  草木を分け入って行くと、人の出入りが全くなさそうなところにある、こじんまりとした小川にたどり着いた。  日差しも強く、身体も疲れたサンドリーヌは小川の側に洞窟状の岩陰を見つけると、そこで身体を休めることにした。  中を覗き込むと太陽の位置のせいか、その岩陰の奥にキラキラと光を反射するものがあった。
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