第一章 うさぎ、跳ぶ

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 お昼休みの教室に、スピーカーから流れてきたのは大好きな会長の声だった。 「生徒会副会長、吉居(よしい)(じん)。書記、高梨(たかなし)卯依(うい)梶原(かじわら)大樹(だいき)。至急生徒会室まで来るように。繰り返します。二年二組の吉居、一年の高梨、梶原は生徒会室まで」  会長が、私を呼んでいる!? しかも大至急だなんて! こうしてはいられない!  給食の(しめ)である牛乳を、ゆったりと飲んでいた私は、チュウズズズッとほっぺたをすぼめてストローで一気に残り半分を吸い込んだ。 「うさぎちゃん、生徒会の定例会は昨日よね?」 「うん、そうだったはず?」  そういえば、今日はなんで呼ばれてるんだっけ? 「生徒会長の声、なんだか怒ってたよね」 「そう? 私には『早くおいで、待ってるよ』って、やさしく聞こえたんだけどな?」 「うさぎちゃん、一度耳鼻科行っておいでよ」  気の毒そうに苦笑いをする隣の席の長瀬(ながせ)未来(みらい)ちゃんに首をかしげながら、席を立ち(から)になった皿が並ぶ給食トレイを持つ。 【うさぎちゃん】それは私のニックネームだ。  名前に()(どし)()があるからか、それともいつもツインテールをしているせいか、入学してからすぐに生徒会長につけられた呼び名は、今ではクラスにも広まっている。 「じゃあ、いってくるね! 五時限目までには戻ってこられると思うけど」 「あたりまえでしょ! いってらっしゃい」  食器を片付け、見送ってくれた未来ちゃんに手をふり、四階にある一年三組の教室を飛び出して、五組の前の階段まで行くと。 「あ、大樹くん」 「おう」  五組から出てきた同じく書記仲間の大樹くんとバッタリ出会った。
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