第一章 うさぎ、跳ぶ

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「ごめんね、遅れちゃって。今日、日直でさ」 「失礼します」 「失礼いたします」  吉居先輩、大樹くん、私の順で生徒会室に滑り込むと、真正面の生徒会長席に座る人がこちらを見ていた。  会長の背後から降り注ぐ窓からの春の陽ざしが、まるで後光が射しているように神々しく見える。  ああ、今日もまた、利発そうな銀縁メガネも、淡い茶色のクセ毛のやわらかな髪も、薄く引き結んだ唇も全部全部! 「遅れてすみませんでした! 好きです! 会長!」 「いいから、席につけ!」 「ええっ!? 今日ハジメテの告白をそんな簡単に流さないでくださいよ!」 「若干(じゃっかん)語弊(ごへい)があるな。今日【は】だろ、今日一日を通してだろ? 同じセリフを昨日も一昨日も毎日聞いている」 「間違えてます、会長! 毎日じゃありません、土日は無理です! もし家を教えて下さるなら、土日も告白しに行きますが」 「絶対、やだ」  頭を抱えたように会長が首を横に振った瞬間、生徒会室に笑い声が広がる。  先に席についていた議長である二年一組の戸澤(とざわ)明日香(あすか)先輩が、まあまあと肩を落としている会長をいさめながら話し出す。 「よし、全員揃ったよね? 早速だけど、春の体育祭についての案をまとめようか」 「あ、そうでしたね!」  今、思い出したと声に出した私に。 「やっぱり、忘れてたな」  冷たい視線の会長にジロリとにらまれた。  うちの学校の体育祭は、春と秋にあり、小学校の時のようなリレーなどがあるのが秋。  春は球技大会、これは毎年生徒会が主催しているらしいんだけど。
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