第一章 うさぎ、跳ぶ

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***  昨日の昼休み、毎週恒例の火曜日の生徒会定例会にて。 「毎年、女子はバレー。男子はサッカーって、なんかもっと真新しいものはないか」  会長の放った一言に、確かにと全員がうなずく。  女子はバレーなんだ……、とっても苦手だし、絶対イヤだな、という意味で私もコクンコクンとうなずいた。 「だったら、明日までに一人一人考えてこない? どんな競技がいいか」 ***  明日香先輩の提案に、今日も集まることが決まっていたというのにすっかり忘れていたなんて。 「明日香は? なんか、いい案ある? ちゃんと考えてきた?」  吉居先輩からの問いかけに、明日香先輩がうなずく。 「卓球とか、どうかな?」 「ダメ! 卓球台には限りがあるだろ? そんなの対戦が永遠に終わらないって。現実的じゃない」 「んじゃ、オレが考えてきたバドミントンなんかも」 「無理だな、ペアにしたってコート数が絶対的に足りない。全員参加となったら、何日かかることか」 「だよなあ」  明日香先輩と吉居先輩の案は、会長からすぐにダメ出しされてしまった。 「大樹は? なんかある?」 「えっと、バスケ、とか」 「うん、コートが足りないし。人数もそこまで使わないよな」 「だったら、去年のままでいいんじゃない? それか男子は野球で、女子はソフトボールとか」  吉居先輩が昼休みの時間を気にしてか、時計をチラチラ見ながら早めに話を進めようとしている。 「ソフトボールって外でやるんだよね? 日焼けしちゃう! そんなのイヤですよね、なっちゃん先輩!」  明日香先輩に助けを求められたのは『なっちゃん先輩』こと、この中で唯一の三年生である会計の瀬野(せの)夏海(なつみ)先輩。  皆の意見を微笑んで聞いていた、なっちゃん先輩は。 「私は、どっちでも大丈夫! ソフトボールも楽しそうだよ? 明日香ちゃん、絶対いいピッチャーになりそうだし」 「なっちゃん先輩、なんで、私がピッチャーだと思うんです?」 「だって明日香ちゃん肩が強そうじゃない? ね、うさぎちゃん」 「どうせ剣道で鍛えた腕は筋肉ですよ」  ふくれる明日香先輩に、くすくす愛らしく笑うなっちゃん先輩、間にはさまれた私は愛想笑いで切り抜けようとして、会長と目が合った。
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