第一章 うさぎ、跳ぶ

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「うさぎは? まさか、考えてこなかったなんて」 「そんな、まさか!」  あははとごまかすように笑っているのは見透かされているみたい。  うん、すっかり忘れていた。  だけど、さっきの流れで思い付いちゃったもん。 「ドッジボールです、クラス対抗ドッジボール! 人数が多いので各クラス男女混合で二つの班に分けて、コートチェンジの時に入れ替えるのとか、」  我ながら今考え付いたとはいえ、いい案じゃない? と語っていたら全員の目が一斉に私に向いているのに気づく。 「な、な――んて、ドッジボールなんて球技じゃないですよね?」  おどけて舌を出して冗談ぶって見せたら会長が首を横に振る。 「ドッジボールは立派な学校球技だ。そして俺も同じくドッジボールを提案しようとしていた。ただ、二つの班に分けるのは考えつかなかったが、そうだな、いいかもしれない。生徒会でオリジナルルールを作って、各クラス委員にそれを提示しよう。どうだろうか?」 「賛成します」 「賛成!」 「いいんじゃない?」  満場一致でドッジボールに決まった瞬間、会長が私を見て目を細めた。  それがまるで褒められたくらい嬉しくなって、私もニッコリ微笑み返したらすぐに真顔に戻ってしまった。  うう、塩対応すぎるよ、会長ってば! そのツンデレ感も素敵なんですけどね! 「ごめん、ルール決めは次回の定例会までにそれぞれ考えてくるってことでいいかな? 次の時間体育だから先に行くわ。明日香もだろ?」 「そうだった! ごめんね、また来週、もしくはヒマがあれば放課後に!」 「オレも部活がなかったら顔出すよ」  今日の五、六時間目は二年一組と二組が合同体育らしく、明日香先輩と吉居先輩がお先にと出て行く。 「じゃあ、私もお先に~! ごめんね、相原くん。昼休みしか手伝えなくて」 「いえ、夏海センパイにまでお手数おかけして申し訳ないです」 「オレも次、教室移動があるんでお先に! 会長、放課後、あまり来られなくてすみません」 「気にすんな! 大樹のことバスケ部の連中がほめてたぞ。有能なんだってな! 部活がんばれよ!」 「はい、ありがとうございます! がんばります!」  では、と頭を下げて、なっちゃん先輩と連れ立って出て行く大樹くんを見送ると、生徒会室に残されたのは私と会長の二人だけ。
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