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「お前も、もう行っていいぞ、うさぎ」
「いえ、ギリギリまでいます。いさせてください! 五時間目のチャイムが鳴ったらダッシュで行きますし」
「四階までダッシュで間に合うかよ」
「案外足が速いので、行ける気がします」
「気だけじゃ無理だろ」
あきれたようなため息をつく会長が立ち上がる。
「会長? まだ十分ありますよ?」
「俺が動かなきゃ、うさぎも動かないんだろ? 行くぞ」
「は、はいっ!」
背中を追いかけるように生徒会室を出たら、待っていてくれるやさしさに、また心が躍り出す。
「私は放課後来ますからね、必ず」
「たまには休んでいいんだぞ」
「またまた~! 私がいなきゃさびしいでしょ? 静かでしょう?」
「さびしくはないが、静かでいいかもな」
「え――!」
抗議の声をあげた私に会長が、ふっと口の端をあげた。
今、笑ってくれた?
「ずい分、助かってる。この二ヶ月でうさぎがこなしてくれた案件もあったし。ありがとうな」
「会長……」
そんな優しい笑顔を見ちゃったら、私、また……。
「大好きです! お礼は会長とのデート券でいいですから!」
「やらん。つうか、そんなもんはない!」
「会長、冷たすぎます!」
「おまえが、熱すぎるんだってば」
突き放すような言い方をするのに、ちゃんと私の歩幅に合わせてくれる会長のやさしさを私はちゃんと知ってるもん。
あの日、生徒会室をノックした時から、私はずっと――。
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