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王妃陛下のお取り計らいで借りた庭園の一角。大切に育てられた薔薇が華やかな芳香を放っていた。五月の午後の陽光は少し強めだったけれど、そこも抜かりなく太陽光を跳ね返すとされる白い天幕の下に席を用意してある。 「ご招待いただけて光栄ですぅ、カミーラ様。今日も御髪からお足下まで完璧ですのね!」 「本当、見習いたいわぁ。白金色の髪も艶やかで、とってもいい匂いがして。どんな香油を使ってらっしゃるんですの?」 「そんな……大したものじゃありませんのよ。宮廷御用達のミカエル・ラブローシャが調合したオリジナルなんですけど」 「まぁあ! それでは、わたくしたちにはとうてい手が届きませんわね。羨ましいですわぁ」 「ドレスもそちらコウエン・アッシャーのデザインでしょう? 先日の新作発表会で見ましたもの。もう入手されましたのね。さすがですわ」 「今、流行の最先端て噂されてますものね。買いたくても三年は待たされると聞きましたわ。しかも完璧に着こなしてらして」 「そうかしら? 流行っているなんて全く知らなかったの。お父様がわたくしに似合うだろうってプレゼントしてくださったものだから」 カミーラ嬢の高い鼻がさらに上向いて天に届くのではないかと思うくらい、いい気持ちになっているのは伝わってきた。
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