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カミーラ嬢はわたしより一つ年上の十九歳。学園時代は高等部からしか知らないけれど、当時からその美貌は学内の噂に疎いわたしでも聞いていた。 白金のゆるふわ髪にクリーム色の艶肌、わたしにはキツい印象だけど顔立ちも整っている。そのうえ、父親は内政宰相のタウロン・ディグビーだ。つまり国王陛下の左腕と言ってもいい人。 もっとも彼女は実の娘ではなく、数年前に宰相が再婚した女性の連れ子らしいけど。それに彼女の着飾った身なりを見れば言葉通り可愛がられているのはわかる。 ただ、それでも、わたしはカミーラ嬢をたとえ上っ面の言葉でも、褒める気にはなれなかった。 「この菓子と茶葉も素晴らしく美味しいですわ」 「もしかしてホドワ茶房店の御茶菓子ではなくて? まだ宮廷御用達ではなかった気がしますけど?」 「でも王都では大人気ですって。たしかに甘すぎず、柔らかな口当たりは癖になりそう……」 「さすがカミーラ様、流行をとらえるのがお上手!」 「まぁ、そんな、素朴な見た目で心配でしたけど、気に入っていただけたなら嬉しいですわ」 「……あら、でもたしか、今回の幹事はアリッサ嬢とお聞きしていたような?」 「しっ、黙ってらして、デボラ嬢」 「あ、あら? ご、ごめんなさい。わたくしったら」 令嬢たちの視線が空気と化していたわたしに集中する。ふいに沈黙が下りる。気まずい空気が流れた。
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