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「なるほどな。タウロン様はおまえをあの場で殺したら、自分が疑われると思ったのか」
タウロン……ということは、ディグビー宰相⁈
それでは……あのときあそこにいたマントの人物は、彼だったのだ。
闇魔法をかけたのも、宰相だった。
彼を恐ろしく感じたのは、邪悪な術者に体が反応したからだ。
「それにしても……おまえも運がいいのか悪いのか。せっかく命拾いしたのに、俺の前に現れちまうなんて」
ジノンは皮肉な笑みを浮かべ、わたしの額を軽く叩く。
「まあカミーラにとっては運が良かった。おまえを殺してしまえば誰も知る者はいなくなるしな」
そんなことない。
たとえわたしが死んだって、きっとユリウス様はあんたを地の果てまで追い詰めるから!
……そ、そのまえに、わたしにかけた感知魔法で、もうすぐユリウス様がここに来るはず。
「あいつは気づきもしないだろうけど、俺はあいつのためなら死ぬのも怖くない」
ジノンの昏い目を見て、はたと気づく。
さっき「俺は消える」って言ってたような……。まさか、文字通りの意味で⁈
羨ましいくらいの一途な愛だけど、わたしを巻き込まないで欲しかった。
ジノンの両手がわたしの首にかかる。
苦しい。息が出来ない。
ユリウス様!
助けて‼︎
閉じかけた目の中に突然、青白い光が差しこんできた。
「うわぁっ‼︎」
次の瞬間にはジノンが叫び、首から手が離れる。
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