7/8
前へ
/57ページ
次へ
「なるほどな。タウロン様はおまえをあの場で殺したら、自分が疑われると思ったのか」 タウロン……ということは、ディグビー宰相⁈ それでは……あのときあそこにいたマントの人物は、彼だったのだ。 闇魔法をかけたのも、宰相だった。 彼を恐ろしく感じたのは、邪悪な術者に体が反応したからだ。 「それにしても……おまえも運がいいのか悪いのか。せっかく命拾いしたのに、俺の前に現れちまうなんて」 ジノンは皮肉な笑みを浮かべ、わたしの額を軽く叩く。 「まあカミーラにとっては運が良かった。おまえを殺してしまえば誰も知る者はいなくなるしな」 そんなことない。 たとえわたしが死んだって、きっとユリウス様はあんたを地の果てまで追い詰めるから! ……そ、そのまえに、わたしにかけた感知魔法で、もうすぐユリウス様がここに来るはず。 「あいつは気づきもしないだろうけど、俺はあいつのためなら死ぬのも怖くない」 ジノンの昏い目を見て、はたと気づく。 さっき「俺は消える」って言ってたような……。まさか、文字通りの意味で⁈ 羨ましいくらいの一途な愛だけど、わたしを巻き込まないで欲しかった。 ジノンの両手がわたしの首にかかる。 苦しい。息が出来ない。 ユリウス様! 助けて‼︎ 閉じかけた目の中に突然、青白い光が差しこんできた。 「うわぁっ‼︎」 次の瞬間にはジノンが叫び、首から手が離れる。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加