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そもそもこの事件は、わたしの預かり知らないところで起きていた宮廷政治がベースにあった。第一王子ケイレブ派の内政宰相タウロンと第二王子アレクシス派の外政宰相ピート・サマセットの水面下での対立。サマセット宰相はマリーの父、つまりマリーと王子が結婚すれば実質次期国王とされる男との盤石な繋がりが出来る。一方のケイレブ王子は病弱で跡継ぎを望めるかも怪しいと言われ、タウロンはまずアレクシス王子の結婚を邪魔することを考えた。 自身に娘がいなかったため、タウロンは現夫人と再婚してカミーラを手に入れた。彼女はとても美しかったけれど、誤算だったのは愚かで異性にだらしがないことだった。 まずマリーの次の婚約者候補としてカミーラを推すと、過去関係した男たちをお金で黙らせる。ジュリアン・キャンベルだけはカミーラに会わせろと譲らなかったので、始末されてしまったのだった(今思えば彼女を侮辱したことに腹を立てたジノンが衝動的に刺してしまったようにも見える)。 婚約式のひと月前、ジノンにマリーを襲わせて呪いをかけたのもタウロンだった。 「タウロンほどの上級魔法の使い手になると刃物に呪力を纏わせることも可能だと思う」 ユリウス様の言葉にぞっとした。 「ジノンとカミーラはどのような間柄だったのでしょう?」 「カミーラの母の前夫の息子らしい。彼は……というか前夫もカミーラの母親も爵位がない平民だね。商人だと聞いている。だから一時期は兄妹として暮らしていたらしいけど、血の繋がりはないそうだ。カミーラを慕う様子を見てタウロンはヤツをいいように使えると思ったのかもしれない。召使として雇い入れた」
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