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でもそれはやはり勝手だったのかもしれない。ちゃんと面と向かってお礼を言うべきだった。
「お茶を入れてきますね」
なぜか目につくところにメイドの一人も見えなくて、仕方なく台所へ向かおうとしたわたしの腕をユリウス様がつかむ。
「いいから、聞いて。話をしよう」
「はい」
観念して席につく。
「手紙は読んだよ。僕の伝え方が足りなかったのかもしれないけれど、今回の件がなかったとしても……僕はいずれ君に結婚を申し込むつもりだった」
結婚?!
……言葉が出ない。
今度は魔法のせいではなく、驚きのあまりなんだけど。
「じつは君のお父上には我が家で君を預かる話をした時、君を妻に迎える覚悟だと伝えてある。だからお父上も了承してくれたんだ」
そう……だったんですね。
だからお父様もああいう言動を。
「で、でも、わたし、攻撃魔法どころか、治癒魔法の魔力もろくに使えませんよ?」
「母も魔法はほとんど使えない。魔力量はあるらしいけどセンスが全くなくてね。それでも母は我が家で一番強いよ。あの父も逆らえない」
ユリウス様は笑って答えた。ダイアナ様の一言は、たしかにツルの一声だったかも。
「でもそれは大した問題じゃなくて、何より父は母を愛している。一番重要なのはそういうことだよ」
そう言うとユリウス様はテーブルをこちらに回ってきて、わたしの足下に跪く。
「ユ、ユリウス様⁈」
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