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後片付けもカミーラ嬢の召使がたくさんいたから大丈夫でしょう。 ……なんて、そういうわけにもいかないか。うちのメイドたちも何人か来てくれてたし。と入ってきた入口へ踵を返しかけた、その時 「こ、こんなところへ連れてきて、どうするつもりだ?」 そちらの方から男性の声がして、思わず手近の柱の陰に身を潜める。 「貴殿はあまり聞き分けがよろしくないようですな」 落ち着いた別の男性の声も聞こえてきた。 「そんなこと言っていいのか。**に会わせろ。俺は**としか話さないぞ!」 なんだか不穏な会話だ。彼が言ってる人の名前はよく聞き取れなかった。 気になって陰から少し顔を出し様子を見てみる。 「……いくらなら満足するのですか?」 こちら側から見えるのは三人の男性の姿。一人は柱に背をつけて立つ貴族風の男性。ただ、見た感じではそんなに上等な服ではなさそう。子爵か男爵辺りの子息かな。 その男性と向かい合う形で、わたしの方に背中を向けている人は頭から足元まで隠れるマントのようなものを羽織っていて、声が聞こえなければ男性かどうかもわからなかった。でも紫色のマントは遠目から見てもかなり高級そうだ。きっと金持ちの貴族に違いない。 驚いたのは、そのマントの男性の隣にも人がいたこと。さっきから一言も口をきかない。見た目はずっと若くて、わたしとそんなに変わらない歳に見えた。召使のような簡素な服装。おそらくこのマントの男性の召使だろう。
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