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「アリッサ! 怪我はないか? 何があった?」 わたし、アリッサ・ハーネケンはユリウス・カーネリウム様にぎゅっと抱きしめられて、命が助かったことを実感した。なぜ彼が助けに来てくれたのかはわからないけれど、とにかく御礼と体には傷一つないことを伝えなければと思い、口を開く。 「……」 恐ろしい思いをしたばかりだから全身震えている。だからなのか、声が出ない。 「アリッサ?」 少し体を離してユリウス様がわたしを見た。彼の美麗な顔が間近にある。急に動揺したけど、心配そうに揺れる青い瞳を見て気をとりなおす。大事なことを伝えなきゃ。 「……」 えっ? 声が。 どうして……しゃべれないの? 『犯人は二人組でした』 あらためて言葉にしようとすると、今度は喉に鋭い痛みが走り、思わず喉を押さえた。 「どうした? アリッサ⁈ もしかして喉に怪我を?」 喉を切られたわけじゃない。一瞬の痛みで、今はもう感じなかった。 けれど どうしても声が出ない……というか出せなかった。これはいったい? そういえば あの男が去り際にわたしの喉をつかんで、こう言った気がする。 『おまえは今から一切口をきけなくなる。このことを誰かに伝えることは決してできない』と。 一時間ほど前。 わたしは王宮主催のお茶会という名の『新婚約者カミーラ・ディグビー嬢を褒め称える会』に参加していた。
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