12 知らなかった伯父の存在

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12 知らなかった伯父の存在

「だけど子爵は許していない訳です。  だからジュリエール様は、子爵が収賄の関係に巻き込まれた――巻き込まれた、ときっぱり言ってました!――のは、そんな家庭のごたごたがあったからではないか、と推測してました。 そしてまた、そんな実家のことで気を病んだカミーリアさんも、妊娠した後に身体の調子を落としたのではないか、とも。  時間がごちゃごちゃしている様ですが、実際のところ、あの辺りは何やら確かにいつ誰がどうしたということがごちゃごちゃしていたそうです。  色んな小さな出来事が積もり積もっての事件の公表だったらしく、結果として貴女が八つの頃に子爵にそういう処罰がされたのだとしても、事件の後始末はその前数年に渡って色々あったということです。  まあその辺りは、オラルフさんの受け売りなんですがね。  私にはその辺りいま一つ判らないのですが、子爵は要するにある派閥に居て、その派閥全体が政治的に負けたのだ、と言ってました。  ……やっぱりその辺りは難しいですね!  それでも十年の蟄居は長い、とオラルフさんは言ってました。  特に政治的に働き盛りの時代の十年を奪うというのは、非常に痛手だと。  で、動けなくなってしまったことで、子爵はフレデリックさんのことを探すことも断念してしまった様です。  正直、ジュリエール様によると、このひとはまともな方な様なので、見つかって欲しいものなのですが」  伯父様が居た!  そして見つからない!   あれ? だったらもしかしていとこが居るのかも?  などということが私の頭の中を駆け巡った。  インド。  そう言えば、最近来た壺は何処からのものなんだろう?  ふと私はそう思った。  綺麗な装飾なのだが、特に陶器の上に金で模様がふんだんにされているのが豪華というか珍しいというか異国的というか。  私はヒュームのところへ行って、壺が何処から来たのか尋ねた。 「うーん…… 送り主の名が無いんだ。ただ、途中の通関とか見ると、インドとかチャイナとかジャヴァとかそういう方面かなあ……」 「インド――」 「まあ、確かにあのやたら細かい模様は、博覧会でもありましたねえ。ああ、チャイナよりジャポンかな。ともかく、向こうですね」 「差出人の判らない荷物を夫人は待っていたんですね……」 「ええ。旦那様がご存じかどうか判らないですが。まあ報告はしますよ」  にっ、とヒュームは笑った。  なるほど。  それでどう父が反応するのか。  それとも父の伝手で夫人は買ったのか。  その辺りがヒュームには伝わるだろうし。  そう言えば父の親戚関係もそちらに居るとか居ないとか。  駄目だ駄目だ。  まだ考えるのに材料が足りない!
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