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22 母をただただ恨んでいたいのに
その夜はアリサと一緒に床の中に入っても、まんじりとせずまるで眠れなかった。
アリサもそれは同じの様で、私達は色々とぶつぶつと話していた。
そして一方で私は母と弟のことを考えていた。
同情はしない。
彼女に対してざまあみろという気持ちは充分ある。
そう単純に考えたいところなのだ。
だってあれは、あまりにも理不尽だった。
あの時。
私がシーツの上に赤黒い染みを見つけた時。
そして報告された時。
母の驚きと蔑みの目はずっと私の中の残っては、ちくちくと胸を刺した。
何で家の中での「女」は一人でなくてはならなかったのか。
それほど夫が娘であれ他の女に目を向けるのが気に食わなかったのか。
だったらそもそも産まなければ良かったのに。
いや、産めばそれが駒になる。
そして本当に世継ぎを産んだら捨てればいいと思っていたのだろう。
私は彼女にとって、男爵家に入り込むための駒。
そしておそらく、弟も居着くための。
ああ嫌だ嫌だ。
そこでまた、色々考えてしまう。
考えるのはアリサの方に任せてしまえばいい、と思うのに、母に関してばかりは、どうにも自分の気持ちが治まらない。
そもそも駒として使うのだったら、何で八つまで母子でそれなりに暮らしたんだ。
十三まではそれなりに世話をしたんだ。
人形遊びの様に着飾らせるのが楽しかったのか。
でもそれならきちんとした勉強をさせることもなかったろうに。
体面? そう考えてしまえば簡単。
そうであって欲しい。
このアンバランスさが、私を苛つかせる。
頼むから、私に貴女を完全に、単純に憎ませてくれ。
そうでないと、私を追い出したこと自体、自分がいつかハイロール一族の報復に巻き込まれることから回避させたのではないか、なんて人のいい考えに至ってしまうじゃないか。
いや、知るはずはない。
知っていたら弟をも追い出していたはずだ。
何かしらの手を使って。
……そんなことを考えてしまうのも、私の何処かに、母を憎んでいる一方で、「あの時までは愛していてくれたんだ」という気持ちがあるからだ。
あの時まで愛してくれていた。
その後はきっと何処かで考えがおかしくなってしまったんだ。
何処かで考え直してまた私と暮らしてくれるかもしれない。
絶対無い!
あの時の私を見る目はくっきり今でも思い出せる。
だからこそ、自分自身希望を持ちたくないのに。
それなのに。
何で心の何処かで、少しでも母は自分のことを思ってくれていた、と思いたいのだろう。
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