黒い卵

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梅雨が明けて暑さが厳しさを増す7月下旬のある日の朝、夏休みに入っていた私は卵を集める作業をしていた。 自宅の養鶏場で飼育している鶏は「白色レグホン」と呼ばれている、日本国内では飼育数の約80%を占めている白いたまごを産む鶏で世界的にも普及している。 鶏は「バタリーケージ」というワイヤーでできた金網の中に入れて、それを連ねて飼育していて、卵を産むと手前の棚に転がる方式だ。 私が鶏舎の端から棚の卵を1つ1つ手提げの籠に集めていると、鶏舎の中央あたりの棚に黒い丸いものがあることに気が付いた。 私がおそるおそるその黒い丸いものを手に取ってみると、形と重さは白い卵となにも変わらないように感じた。 私は卵集めを中断して、別の場所で卵集めをしている母の所に行ってこのことを伝えた。 「お母さん、これ…」 私が黒い丸いものを見せると、お母さんはそれを手に取って、 「えっ!  何これ?  卵みたいだけれど、どこにあったの?」 と言ったので、私が見つけた棚の所にお母さんを連れていって、 「ここに他の卵と一緒にあったよ!」 と指差して伝えた。 お母さんはどうしたものかと考えているようで、 「専門家に見てもらった方がいいかもね!  これはここに除けておいて、まずは卵集めちゃおうか?」 と言ったので、私は卵集めを再開した。
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