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翌日、家族で夕食を食べているとニュースで黒い卵のことが放送されていた。
放送では千葉県船橋市の私の家の養鶏場で黒い卵が見つかったということ、この卵のことを国際鳥類研究所で調べているということが報道されていた。
この卵のことはアメリカの国際生物研究所でも注目されていて、国際鳥類研究所と情報交換をしているという話もあった。
私が見つけた黒い卵が世界的に注目されていることに、私は複雑な心境になっていた。
さらにこの話はインターネットのSNSでも大きな話題になっていて、世界中に拡散されているような感じだった。
私は何か大げさな話になっているように感じた。
夏休みが終わりに近づいた8月下旬のある日の朝、いつものように私は卵を集める作業をするために鶏舎に入ると、蒼音がしゃがみ込んで何かをしているようだった。
私が覗き込むと蒼音は、左手に白い卵を持っていて、右手に太い黒のマジックを持っていた。
私は少し嫌な予感がしながら蒼音に、
「蒼音、何をやっているの?」
と声をかけると蒼音が、
「うん、卵を黒く塗っているの…」
という返事が返ってきた。
このときの私は目の前が真っ白になり、体中の血液の流れが急に止まったかのような感覚になった。
私は「血の気が引く」ということがどのようなことなのか、小学4年生になって、はじめて知ることになった。
私は蒼音を怒る気にはなれなかった。
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