雨上がりの白いタクシー

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     阿部は結局、そのまま帰らぬ人となった。  居酒屋という公共の場における突然死であり、警察が関わる案件になってしまう。  検死によれば、死因は急性アルコール中毒。血中アルコール濃度も驚くほど高くなっており、ビールならばグラスで何十杯も飲んだ計算になるという。  しかし……。 「えっ、嘘でしょう?」 「いやいや、そんなに飲んでないですよ!」  阿部が死んだのは、飲み始めてからまだ半時間も経っていない頃だ。彼のビールは一杯目で、それもグラス半分程度しか()いていなかった。  一緒に飲んでいた私も岡田も正直に証言したし、オーダー票でも、それほど大量のアルコールの追加注文は記録されていなかった。  だが、それでは検死の結果と矛盾する。あくまでも警察は検死結果の方を信用するため、私たちは「隠蔽したい事実があるからこそ、偽証や記録改竄をしたのではないか」と怪しまれてしまった。  大変だったのは、警察の追求だけではない。  たとえイッキ飲みのような強要はなかったとしても、新歓コンパというサークル行事の中で死者が出たのは事実であり、その点を大学側から責められたのだ。  私たちのサークルはしばらくの間、活動停止を言い渡された。しかもちょうど新歓の時期だったので、新入生に対する心象も悪くなり、一年生が大量に辞めてしまった。  もはやサークル存亡の危機にすら発展したわけだが……。  個人的には、それどころではなかった。  阿部が亡くなってから二ヶ月が過ぎた頃、今度は岡田が事故に遭ったのだ。    
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