平行線の三角関係

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「安心してください、お嬢! すぐに家に着きますから!」 「……いい、いい。安全運転なさい」 「もちろんです!」 琳子さん並みの子犬感。 これが工藤の素顔だ。 「ねぇ工藤。聞きたいことがあるんだけど」 「なんでしょう?」 サングラスを外した工藤は、外では見せることのない満面の笑みを浮かべている。これが漫画だったら犬の耳と尻尾をつけて描かれるんだろうなと思う。 「工藤、わたしに……」 「何ですか?」 「GPSつけてるわね」 「はい!」 「はい、じゃねぇよ!」 あまりにも元気のいい返事に思わず後部座席から運転席を蹴ってしまった。 ローファーの靴跡が座席にくっきりと残っている。 お祖父ちゃんの車なら慌てて拭き取るところだけれど、これは工藤の車だから放っておく。 「だって、そうでもしないとお嬢逃げるじゃないですかぁ」 「あったり前だろ! あたしは! 平穏な高校生活送りたいっつってんだよ! それでなくてもあたしの家柄的にあの学校とは釣り合ってねぇのに!」 「お嬢、口調が戻ってますよ」 ハッとした私はこほん、と咳払いをした。 いけない、いけない。私は上品で清楚なお嬢様でいたいのに。 「でも、送り迎えをつけるのがお嬢があの学校に通う条件でしょう? 親父(・・)と約束したんですよね?」 工藤が指す「親父」とは、わたしの祖父だ。 そう言われてしまうとぐうの音もでない。その通りでしかない。
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