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「そういう工藤はどうなのよ。琳子さんのこと、どう思ってるの?」
「なんといいますか、可愛らしいお嬢さんですよね! お嬢にお友達ができて俺は嬉しいですよ!」
……この男。犬のように天真爛漫な素顔でも頭はきれる。琳子さんの好意に気づいていないほど鈍感ではないはずなのだけど。
はぐらかしたわね。
「……はぁ、もういいわ」
「お嬢が求めてる答えは返せませんよ」
気づいてるんじゃないの。
「別に私は何も求めてないわ。琳子さんのほうは知らないけど。ま、好きにしたらいいんじゃないの? 2人の問題でしかないわ。もっとも、私は琳子さんに工藤をおすすめしたりはしないけどね」
私は腕を組んで後部座席に凭れ掛かり、足を組みなおした。
バックミラー越しに工藤の視線を感じたが、気づかないふりをした。
だって、私も鈍感じゃないから。
「ところで工藤。今日のおやつは何かしら?」
「今日はみたらし団子です!」
「……和菓子。たまにはケーキとか食べたい……」
「親父がお嬢のために一緒に作ってくれたんですよ?」
お祖父ちゃんが作ったなんて聞いたら、食べたくないなんて言えるわけがない……。
私は流れる景色をぼんやりと眺めながら、ふと思いついたことを口にした。
「……ねぇ、今度お祖父ちゃんに洋菓子を教えてみてよ」
「そんなに和菓子が嫌ですか?」
「これはただの興味よ。作ってくれるのか気になるだけ」
「じゃあ、明日はそう提案してみます」
明日のおやつが楽しみになった。
その前に今日のみたらし団子が待っているのだけど。
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