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ーー
家について車から降りた私を、組のメンバーが「お帰りなさいませ、お嬢!」と声を揃えて出迎えてくれた。
彼らは別に私の世話係でもないから、黒いスーツは身に纏っていない。もっとラフな格好だ。
世話係だけが黒服なのは、外で見られても執事と勘違いしてもらうためのカモフラージュ。私がそうするように命じただけの格好だ。
「それやめろっつってんだろ」
私は低い声でボソッと呟く。聞こえていたらしい近くの組員がビクッと肩を跳ね上げた。
今の反応、最近来たばかりの新入り組員か。他の面々は私のこの口調に怯えたりしないから。むしろ可愛げがあるとまで言い出す始末だ。
どこに可愛げがあるんだか……。
そのことを思い出して呆れため息をつく。また近くにいた新入りを怖がらせてしまった。
家に入った私は、一人だけ付いてきていた工藤を振り返らないまま口を開いた。
「工藤。私もあなたが求める答えは返せないわよ」
「……へ?」
車の中での話題を突然持ち出した私に、工藤は何のことかと言いたげな間抜けな声を出す。
けれどすぐに私が言いたいことを察したらしい工藤は「あぁ」と呟いた。
「分かっています。お嬢の負担になるようなことはしません。ただ、お嬢の世話係でいられるなら、それでいいです」
「……。さて、みたらし団子、食べましょうか!」
工藤の答えに何も返さないまま、私はその場の雰囲気を変えるように明るく言った。
私が工藤の気持ちにちゃんと答える日が来るとしたら、それはきっと、工藤が黒いスーツを脱いで私の隣を歩いてくれた時。
彼が黒いスーツで私の後ろを歩く間は、何が何でも振り返らない。
了
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