夏夜物語

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 その後は、私の知らない、夜の街をぐるぐると回り、コンビニも見当たらないひと気のないところへ来たと思っていると、不意に奏くんが声を漏らす。 「ここ、葛岡霊園。じーちゃんとばーちゃんとかーちゃんが眠ってるところだ」 と、ダッシュボードに行儀悪く乗せていた脚を、正しく下におろした。 「じゃあ、行くぅ?」 「こんな夜中にお墓参り?」 と、少しハスキーな声で桔咲さん。 「楽しそう!」 と、両手を挙げる葉乃ちゃん。 「夜中にお墓の写真撮っても大丈夫なもんかね?」 と、今夜だけでも何回もスマホ撮影してきた透波くん。 「アナタ怖い?」 と、九条さんが言うと誰も返事をしない。 「アナタ」  片手の平を前から向けてくる。 「あ、私……ですか? いえ、大丈夫です」  私の返答を受けて、奏くんが左手で左方向を指さした。  運転手の九条さんがハンドルを切った。  車は黒緑の生い茂った、狭い坂道を登っていく。
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