夏夜物語

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 スマホの画面に目を向けながらも、ちゃんと会話に参加している透波くん。 「呼んでみるか」  桔咲さんもブランド物の小さい鞄からスマホを出し、画面を開いて、耳に当てた。  相手はすぐに出たらしく、通話は数秒で終わったようだ。 「九条、来るって」  わーい、と口に木べらを咥えたまま葉乃ちゃんが歓ぶ。  口の中にアイスが入っていたのか、わーい、が、もーい、に聞こえた。 「葉乃、車好きだもんな」 「夜のドライブ楽しい」 「夏雨ちゃんは、遅くなっても大丈夫?」  桔咲さんが次の煙草に火を点けて、声をかけてくれた。  私が家にいてもいなくても、親は気にしない。 「はい」  ドライブなんて何年ぶりだろう。  私は少しドキドキし始めた。
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