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4 本職悪役ヒロインは王宮へ
その後、青年は、公爵家に通常の料金の倍の金額を請求したが、投資分以外は報酬及び見舞金としてローナに渡した。
そして、もう二度とこのような恐ろしい思いはさせないので仕事を続けて欲しいと、ローナの前にひざまずき懇願した。
一度は、この仕事を辞めようと思ったローナだったが、彼の真摯な態度に心を打たれ本職悪役ヒロインを続ける決心をした。
それ以来、ローナは職務に徹し、行き過ぎた演技で相手に変な感情を抱かれないよう、気をつけて接するようになった。
青年に心配をかけたくないという思いもあったし、自分を引き留めた彼の期待に応えたいという気持ちも強かった。
菫色のドレスは、大事な経験をさせてくれた記憶に残る一着だった。
ローナは、胸の奥に温かいものを感じながら、懐かしむようにドレスを見つめていた。
「そちらがお気に入りなのですね。でも、今日のドレスは、こちらにするようにと主から申しつかっております」
いつの間にか、ローナの背後に来ていたネリーがとりだしたのは、真珠やレースがふんだんにあしらわれた真っ白なドレスだった。
「素晴らしいドレスですけど、白というのは、まるで花嫁衣装のようですね」
ローナがそう言うと、ネリーは微笑んで答えた。
「そうですね――。ですが、こちらはきっと、ローナ様にぴったりだと思いますわ。それに主からの命令ですので、どうか遠慮なくこのドレスをお召しになってください」
ネリーは、連れていたメイドたちに命じて、ドレスに合わせた靴や装身具なども寝室へ運ばせた。
そして、全員総出でローナを磨き上げ、今夜の仕事に備えたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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