第0章:はじまりは突然に

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第0章:はじまりは突然に

真新しい、純白のワンピースにボレロ、そして学院指定のマントを着こみ、鏡の前に立つ少女が一人。 その手には金色に輝くミツバのエンブレムに、『ユキハ』と少女の名が彫られたバッチが握られていた。 今日は世界に三校のみ存在する王立魔法学院の一角、王立魔法学院マトリア校の入学式なのだが、先日ユキハの元に純白の制服と共にこのバッチが届いたのだ。 これは毎年入学試験の結果をもとに選抜された特待生二名に贈られる伝説のバッチと謂われている。 「特待生ならタダで学校に通えるし、卒業できれば明るい未来が待ってる……お金ない私達には助かるけど――」 しかしこの特待生選抜に嬉しさと同時に、気が引ける理由がユキハにはあった。 この世界に生きる人間はみんな生まれつき魔力を有しており、成長と共に自身の領域を展開し魔法の使い方を身に着けていく。 中でも王立魔法学院に入学する者となると、独自の領域を展開し、初級レベルの魔法であれば縦横無尽に使いこなすというのが言わずと知れた常識である。 それに対し、ユキハは領域展開できないどころか、魔法全体がからきしで、自身に流れる魔力の属性すらわからない。 では武術に優れているのかというと、幼い頃から施設の特別室にて幽閉されて育ってきた彼女にとって自身に適する武器もわからないとき た。 悶々と考えながら身繕いをしていると、唐突に古びた鉄製の扉が叩かれる音が部屋中に響き渡った。
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