第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「そんなことはどうでもいいだろう。早く領域にはいれ。ただし、浮いている術式にはふれるなよ。変な所に飛んでしまうからな」 「そういえば目的地より北に三つズレてしまって、馬車にひかれそうになったこととか、転移先が池の上でいきなり溺れそうになったりあったなぁ。アイリスがいて助かったけど」 「「迅速にかつ冷静に入らせていただきます!」」   二人は宙に浮いている文字に注意しながら領域内に入ると、続いてマグナ、アイリス、そして殿を務める形でカレンが入ってきた。 『我が心身は風の友。今風となりて空間を超える』   ゼロの詠唱と共に全員の体は宙に浮かび、その場から姿を消した。そして次の瞬間草原に到着したかと思うと、トウヤは緊張心から尻もちをつき、ユキハは胸を撫で下ろした。 「そもそも術式には俺の魔力が流れているんだ。触れた位で消えるわけないだろう」 「え、じゃあ転移に失敗したっていうのは……」 「「シャレだ」」 「笑えんわ!」 感情のままに叫ぶトウヤの声で目が覚めたのか、モノは目を覚まし欠伸を噛み殺す。 「たく、だっさいなぁ。それでも僕と同じ雷属性なわけ?」 「お怪我はありませんか? どうぞお手を取ってください」   フンっとそっぽを向くモノと対照的に優しく手を指し伸ばすアイリス。トウヤは頬を赤らめ、アイリスの手を取ると立ち上がり、土埃を払った。それを見たモノは眠そうに目を擦り、顔をマグナの背に擦り付ける。 「マグナ兄……」 「ほら、中途半端な覚醒でまだ眠いんだろ。眠らせてやるから力を抜け」   マグナは右手に蒼い光を集中させそれをモノの頭にあてがうと、再びモノは眠りについた。 その様子を見たユキハは悪寒を覚え、一歩二歩とマグナから距離を取っていると、コツンと背後にいたゼロにぶつかってしまう。 「モノは他の獣の中でも血が濃いんだ。それでもってまだ幼い。だから、長時間の日中活動はとてつもない力を消費しちまう。それから守るために必要外では眠らせているんだ。あいつを守るための行動だって思ってくれ」 マグナが取った行動の理由を知り、ユキハはゆっくりマグナに近づくと、後ろで昏々と眠るモノの頭をそっと撫でた。
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