第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「驚かせてごめんな。俺にはユキハを守るっていう絶対条件と同時に、こいつらを守るって役割もあんだよ。獣のリーダーとしてな。っとまぁ、堅苦しい話は置いといてまずは遊んで来いよ。こんな所中々来れないだろ。ここならトラブルの心配もないだろうしな」   改めてあたりを見渡すと、広大な原っぱが一面に広がっており、四月という春の季節ながらここには夏風が吹いていて心地よさも感じる。 特にユキハにとっては、この世に生を得てからほとんどの時間を施設内で過ごしていたことも重なり、全てが新鮮で、笑顔でその場から走り出した。 「俺達は、今後のスケジュールの相談とかするから、お前らも行って来いよ」 「「はーい」」 解散の合図でアイリスはユキハの元へ駆け出し、カレンはその場で寝転がると、生えている草花の香りを体に擦り付けたりと各々のペースで一時を楽しみ始める。 その頃ユキハは全身で夏風と花の香りを楽しみ、丘の頂上から原っぱ全体を眺めていた。 「綺麗ですね。こんな景色初めてです。外に出て本当に良かった」 感激のあまり言葉を漏らすユキハにアイリスはそっと笑いかける。 「本当にここはいつ来ても素敵です。ユキハ様こちらに」 アイリスは覚醒具をつけ翼をその背に生やすと、ユキハへ手を差し出した。 そしてユキハがその手を取ると、翼を羽ばたかせ宙を舞いあっという間に上昇していく。 それにより生じる浮遊感に目を閉じるユキハであったが、アイリスは目を開けるようそっと告げた。 その言葉にゆっくりと目を開けるとそこには一面桜の花が咲き誇っており、それを見たユキハは自分の中で様々な感情が入り混じり言葉を失う。 「綺麗でしょう? 桜は我々にとって特別なのです。なのでぜひこの桜をユキハ様にも見ていただきたいと思いまして」 「特別ですか。私の中でもそうかもです。昔過ぎて明確には覚えていないのですが、桜の下で大切な約束をしたんです。大切な――あれ?」   大切な出来事のはずなのに、何故か思い出せないことに頭を抱えていると、アイリスは数度瞬きをし、『お揃いですね』と語りゆっくり下降していく。無事着地したところでアイリスはユキハを解放し、覚醒具を外した。 「アイリス先輩! ありがとうございました」 「いえいえ、私はユキハ様の翼ですから。いつでもお連れ致しますわ」 「私の翼……」   するとアイリスはマグナ達がいる方を向き何かを察知したのか、ユキハに手を伸ばした。 「マグナ達の方もきりがよいみたいですわ。私達も参りましょう」 何故そんなことがアイリスにわかったのか内心疑問に思いながら元来た場所へ戻っていくとそこには手を振ってこちらを迎えるトウヤがいた。
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