第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「視覚の覚醒おめでとうございます」 「え? 覚醒?」 「絶対記憶とか言ってるけど、見えてるんだろ? 過去に見た記憶が。それが絶対記憶の正体だ」   突然の指摘にユキハは狼狽しトウヤを見つめるが、トウヤは深いため息をつく。 「別に隠してたわけじゃないっすよ。あれは昔からユキハがたまに見せる光景でさ。でも、その後大抵大泣きするんだよ。それがあまりに痛ましいから止めてたってわけ」 「なるほど。『未来を見通し、過去を遡る』。これが姫の瞳の力だ。その力を不完全なまま使っているのだろう。力を使ったら泣くと言っていたな。怖い過去でも垣間見たか?」 ゼロの問いに、ユキハは静かに涙を流し俯く。 「いつも、大切なあの人が私の前から消えるんです。最初は誰かわかっていたはずなのに、力を使えば使うほどそれが誰かもわからなくなって……ぽっかりと心に穴が開いて、最後には独りぼっちの暗闇に落とされる――」   そんなこま切れな言葉にゼロが一人顔を顰めたのを見逃さなかったマグナはゼロの前に立つ形でしゃがみこんだ。 「そっかそっか、怖い体験してたんだな。それは力の暴走だよ。力のコントロールができてないから、そんな夢見ちまうんだ。俺達も一緒。力のコントロールを修行の末身に着けたから、この覚醒具である面をつけることで、この血に刻まれた獣の力を使うことができるんだ。ま、ユキハの場合、俺達みたいな血の繋がりのある直系の生まれ変わりじゃなく、魂を継いだ時限の生まれ変わりだから覚醒具なしでも力使えるけど、その分使い方の練習しないとな。さぁ、込み入った話はこれまでだ。話進めるぞ」 「魔石の話だ。つまり、ユキハに渡した魔石には、風の初代獣騎士:烈風の魂の核が封印されていた。そして、今はそれがユキハの中にある。さぁ、その心は?」 「「風属性の魔法が使える!」」   二人は数秒考えこんだ結果一つの答えが浮かび上がり、勢いよく挙手して回答した。 「正解だ。だから今のユキハは一般人と何も変わらないというわけだ」 「ま、当然練習は必要だけどな! さぁ、お二人共、これから魔法の訓練に入るわけだが、どの先生をご所望かな?」   マグナとゼロが胸ポケットから伊達メガネをリズムよく取り出し装着すると、クイッと弄る。 「えと、じゃあ私はゼロ先輩で……同じ風属性ですし」 「俺はアイリス先輩達で……」 「俺はお呼びじゃないってか。じゃ、俺はピザの食べ放題でも行くか」 「ピザ⁉」 その一言でモノはむくりと起き上がり、滴り落ちる涎を拭った。その様子を見たマグナはモノの頭を撫で、ケラケラ笑いながらその場を去っていくのであった。 「素直にマグナ先輩に教えてもらった方がいいと思うけどねぇ」 「えぇ……」   心配そうにそう呟くカレンとアイリスを見たゼロは、全員をその場に座らせ講義を始める。
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