第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「ほう。既にこのレベルの解読ができるのか。おもしろい。ではこれはどうだ?」 ゼロは次々と紙に方程式を綴るとユキハに解読させる。 何も教えていないのに、中級魔法レベル以上の方程式を瞬時に解読していくユキハに、ゼロも興味が湧いてくるようで意気揚々と術式を組んでいく。 しかし、ゼロが何をしたいのかわからずユキハは困った表情を浮かべた。 「どうやら、この意味が分からないようだな。ユキハ、魔法を習得するにあたって一番の難所は何かわかるか? それはこの解読だ。これはどうしても経験がものを言うからな。何かトレーニングでもしてたのか?」 「魔法使いって憧れの存在だったんです。キラキラした力を使える正義の味方って感じで。施設ではトウヤ以外の人と関わることは禁止されていたので、たまにトウヤが見せてくれる魔法がとても素敵で。それからは、二人で夜明けまで夢の魔法使いについて語ったりしてました。欲しいものは何でも与えられましたから、その時魔法関係の文書と、古代文字の文書を好んで読み漁ったんです」 「なるほどな。なら、話は早い。ユキハには裏技を使ってその憧れを体験させてやろう。俺に背を向けて座れ」 素直に座るユキハにゼロは二枚の紙を渡し、その背に右手を添える。 「その方程式を詠唱しろ。俺がユキハの魔力を操作してやる」 「はい! えっと……領域展開:時突風」   詠唱と共に、体の中に眠るエネルギーが意思を持って動き始めるのを感じ、ユキハは無意識に抵抗してしまう。 「初めての体験で気持ち悪いかもしれないが、俺を信じて力を抜け」 深呼吸でその言葉に応えると、ユキハを中心に十メートル程の領域が一気に展開し、当の本人は驚きの声を漏らす。 「さぁ、次の方程式だ。さぁ目を閉じて詠唱しろ」 「我生むは万物の長である風。今こそ巻き上がり、我が意思に沿って吹き荒れろ。風の灯」 「上出来だ」 ユキハの周りに五つほどの小さな竜巻が生み出され、それらはユキハの領域内を駆け巡り始める。 その様子を静かに見守るユキハにゼロは手を添えたまま話始めた。
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