第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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その頃トウヤ達もまた、方程式の解読の練習から開始した。 「では私達も始めましょうか。とはいえトウヤ君の実力を私達は知りませんから……まずは、試しにこちらの術式の解読はできますか? 少しずつで大丈夫ですよ」   トウヤは差し出された紙を手に取ると、手書きで丁寧に描かれた術式に視線を落とした。 「この方程式の形、魔力付与の術式っすね。俺のために組んでくれたんっすか? えっと、『我が身に雷神の力舞い降りて、雷獣の神速ここに得ん』っすか」   ゆっくりとした発声ではあるが、初見で中級レベルである魔力付与の解読をしてのけたトウヤに、二人は感嘆の声をあげた。 「へぇ、トウヤすごいじゃん。これ、中級魔法だよ? トウヤに合わせて組んだとはいえねぇ。これ、マグナも驚くんじゃない? 見せたかったなぁ」 「ほんとに。古代語は身近でない分、解読には時間がかかるもの。これは習得も速いかもしれませんね」   想像以上の出来に歓喜する二人に相反して、トウヤのテンションは下がりしまいには苦笑を漏らす。 「まぁ、それなんだけどさ。『領域展開:紫電万雷』」   トウヤは適度な大きさの領域を展開し、先程解読した方程式を詠唱するが何も起こらず、場の空気が凍りついた。 通常自身で解読できているレベルであれば、過去の経験とも掛け合わされ、魔力を流す過程で何かしらの反応がおこるもの。トウヤのように雷属性であれば、魔法が発動しなくても多少の放電反応が起きるのだが、全く何も起こらないことに二人は固まってしまう。 「ま、まぁトウヤの事情からみても仕方ないって!」 「俺さ、捨て子なんだよね。まぁ親の顔なんて知らないんだけど。で、ユキハの世話役兼付き人って形で保護されて、それからはそれが俺の存在意義なんだよ。幽閉されて育てられたユキハは精神的に幼すぎて日常生活に支障が生まれてたからね。んで、話戻すけどユキハが考古学とか、魔法基礎が大好きで遊び感覚で俺も一緒に勉強したんす。俺はユキハ程優秀じゃないけど、そこで解読を身につけたんだ。でもユキハ、魔法使えないでしょ? だから解読までは勉強したけど、その先はてんでダメなんすよ。代わりに俺は武術をひたすら学びました。そっちの方がやっぱ性に合ってるし」 「なるほど。では一緒に学んでいきましょう。一歩ずつ成長できればいいんです」 「ゼロ先輩みたいな奥の手はないけど、あたし達も頑張るからさ」 「うっす。よろしくお願いします」   こうして三人もまた修行を開始した。
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