第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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ユキハもまた三日前からゼロのサポートを受けながら練習を開始したが、魔法初心者のユキハには魔力のコントロールが難しく、自力で発動まで難しく落ち込んでしまう。不出来な自分への屈辱と、そんな自分はゼロに見放されるのではないかという不安にすすり泣いた。 「実際に魔法に触れてみて、絶望したか? 出来が悪いと捨てられると思ったか? 魔法を習得するには当然時間はかかる。それにかかる時間はずっと見守っているから安心しろ。それにお前がどんな奴だとしても、悪だろうと善だろうと、俺はお前を独りにはしない」 自分の気持ちを的確に当ててくるゼロに目を丸くしていると、ゼロは躊躇なくユキハを抱きしめた。 その手の中からは華奢で小刻みに震えながら一歩踏み出そうという気概を感じ、ユキハもまた不器用ながらもゼロの温かい想いを感じ取り、覚悟を決めゼロから離れると、練習を再開した。 しかし、もう一つユキハには大きな問題があった。 それは就寝前になると何故かユキハがいつも泣き出し眠りにつけず、この三日間は夜通しゼロが付き添っていた。 三日経った今日、魔法の練習に伴う消耗も重なりユキハの体力の方が先に限界を越え、ようやくゼロの胸元で眠りについたのだった。 変な誤解を生んでいることを察したゼロは今までの流れを話すとトウヤは全てを理解し眠るユキハの頭を優しく撫でる。 「ゼロ先輩、迷惑かけてすみません。先輩はちゃんと休めましたか?」 「俺のことは気にするな。ようやく少し眠れてるんだ。少しこのままに――」 「ゼロ先輩が無事ならよかったっす」   トウヤがそっとユキハの髪をかき分け額に口付けすると嗚咽交じりだった寝息も穏やかになり安らかな寝顔を浮かべた。 トウヤが自身の力を納めると、三人の視線が集まっていることに気づき、気まずそうに視線を逸らす。 「お前、ユキハに何をした?」 「な、なんでもないっすよ。いつものおまじないなだけで」   正体を明かそうとしないことを悟ったとトウヤにゼロは深いため息をつく。 「俺は獣の立場ではないが、ユキハを守ると決めている。その為にもお前を育てるのは当然のこと。隠したいなら隠せばいいが、何かあればいつでも話せ。その時は味方になってやる」 「はい! そうですね。トウヤ君もまた大切なユキハ様のお友達なのですから」 「そうだね。じゃあ、あたし達は練習に戻ろうか」   カレンの問いにトウヤは気まずそうに頭を掻き、力の解放と共にある程度体力を戻したため再び練習に戻ろうとするが、ゼロはそれを制した。
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