第0章:はじまりは突然に

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「さぁ一緒に、外に出ような」 トウヤは鞄から古びた鍵を取り出し、ユキハの足を鎖から解放させる。 鎖から解放されたことにより、自由を得たユキハであったが、いざ自由となると喜びより不安が勝り、力強くトウヤの服の袖を握った。 「外に出てからも……これからも、ずっと一緒にいてくれる?」 「お前がそれを望むなら、ずっと隣にいてやるよ。でもその前に……その髪色は流石に目立つからな」 トウヤがユキハの額に口付けをすると、純白の髪は色素を得て金色に染まっていく。 「その髪色ならどう見ても雷属性の一生徒だろ。さ、行こうぜ!」 ユキハの不安を全て吹き飛ばすような満面な笑顔で、ユキハの手を取りゆっくりと部屋を出ると、学院に向かって歩き始めた。 施設から出ると最初は周囲の目を過剰に気にするユキハであったが、その必要はないことを悟り、少しずつその持ち前の笑顔を取り戻し屋台を眺め歩いていく。 その様子に安堵したトウヤもまた安堵し、学院へと続く屋台を物色するが、先程から漂ってくる美味しそうな匂いに足を止めた。 「フランクフルトかぁ……うまそうだな。ひとつくらいいいよな?」 「だ、だめだよぉ。買い食いは入学式の後でって書いてあったし……あ⁉」 フランクフルトを売っている屋台の前で二人が押し問答していると、突如突風が吹き荒れ、それに足を取られた屋台のテントは音を立てて崩れ落ち、トウヤは瞬時にユキハを羽織っているマントで庇った。
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