第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「やいやい、炎の権化とも言えるこの俺様に、天敵の風の力を注ぐとは何事でぃ」 「よう紅蓮。まさに四千年ぶりの顕現だな。お前に力を捧げたのはこの子だ。よく見てみろって」 明らかに不機嫌そうに振る舞う紅蓮だが、ユキハの目をじっくりと覗き込むと、驚きの舞を魅せた。 「その目、魂のニオイ……おめぇ、姫様か? なるほどね、なら話は早い。俺様が力を貸さない道理なんてないからな。姫様、おめぇの名前は?」 「ユ、ユキハです。紅蓮さん」 「紅蓮でいいって。不気味かもだけど俺達のように高貴な武器には魂が宿るんだよ。折角姫と契約するんだ。テメェらも起きろ」   紅蓮が指を鳴らすと、モノ・アイリス・カレンの武器が属性色の輝きを放ち、それぞれ狼・イルカ・猫に姿を変え、ユキハと紅蓮に対し首を垂れる。 そして、守護者四人もまた膝をついた。 「さぁ、ユキハ。契約だ。目を閉じろ」 ユキハが呼吸を整え集中し始めたのを確認した紅蓮は、ユキハの胸元にその小さな手を当て、スッと同化した。 すると次の瞬間、ユキハは体内から焼き尽くされるような苦痛が全身に走り息を乱す。 同時に体も縛られ動くこともできずに、その場で苦しみに耐えるしかなかった。 『苦しいか? 魂の契約は終わりだ。ゆっくり呼吸しろ、少し楽になる』   脳内に響き渡る声に驚くも、その声に従い少しずつ呼吸を整えることで、今までの苦痛が嘘のように消えていった。そしてユキハの両手が光を放ったかと思うと、その手には双銃が握られていた。 「これが私の武器?」 「そうだ、紅蓮が今のお前にはそれが最適な武器って判断したわけだ。試しにあの木を撃ってみろよ」 「あ、はい」   ユキハが指定された木を目がけてトリガーを絞ると、銃弾の代わりに火炎弾が放たれ、木を燃やし尽くすことで自動的にその炎は消火された。 この流れを見たアイリスとカレンは手を取り合って喜び合い、先程召喚された核たちも喜びの代わりに遠吠えを残しその場を後にした。 「なるほど双銃か。使い方によってはユキハには合ってるか」 「へぇ、銃か。カッコいいな! やっぱ銃って憧れだよなぁ」   マグナが指を鳴らすと、自身の手中にホルスターが生成され、それをユキハの両腰に取り付けると、ユキハは嬉しそうに紅蓮を納めた。 「よし、今日から四日間ゼロがユキハを、俺がトウヤを徹底的にしごいてやるから覚悟しろ」 「「はい!」」   そんな返事に一番驚いたのはトウヤだった。 クエスト前のように、気の弱いユキハはもういない。それだけでも、内心マグナとゼロに感謝するのであった。
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