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四日後、クエストに立つ準備を終えた七人は再度集合する。
「んじゃ、旅立つ前にこの一週間の成果を確認するぞ? まず、トウヤ」
「うす」
「俺がみてやろう」
ゼロがトウヤの前に立つと、トウヤは目を閉じ魔力をどんどんと練り上げていき、自身の集中力が高まったところで詠唱を始めた。
「『領域展開:紫電万雷』」
トウヤを起点として半径五メートル程の黄色に澄んだ領域が展開される。
ここまではクエスト前までと同様だが、トウヤは領域を保持しながらゼロへ駆け寄り蹴りかかる。
しかし、それはクリーンヒットすることなく刀の鞘で弾き飛ばされた。
「クソ。『我が身に雷神の力舞い降りて、雷獣の神速ここに得ん』」
トウヤはグローブに雷を灯すと再びゼロに殴りかかる。しかしこれも容易に防がれてしまった。
「そこまでだ。ちゃんと領域変動もできてるし、魔力付与もできてるな。後は反復練習で発動時間を一秒でも短くし、領域の広さを広げていけ」
トウヤがゼロに素直に頭を下げると、続けてユキハにマグナに向かってその力を見せるように指示する。
ユキハが深い息を吐くと、次の瞬間この広場の半分を包み込むであろう程の領域が展開される。
ホルスターから銃を引き抜き、手元で起用に回転させていくと、右の銃は緑に、左の銃は赤く染まり、ユキハは一瞬でマグナとの距離を詰めた。
その様子にゼロ以外のメンバーは驚愕し、体を膠着させる。
「おいおいおい」
それはマグナも同様で、目の前に現れたユキハに対し咄嗟に防御態勢を取るがユキハは気にせず、容赦なく両方のトリガーを引いた。
すると銃口から生まれたとは思えない大きな火炎弾と風流弾が火災旋風を生みマグナを飲み込んだ。
「おい! ユキハ! やめろ!」
「え?」
突然響き渡ったトウヤの声にユキハは攻撃をやめると、目の前の火災旋風から怪我はないものの、軽く服を焦がしたマグナが姿を現した。
……しかし怒りを覚えているらしく、それをユキハではなくゼロに向けた。
「ゼロ、お前の仕業か」
「俺を怒るのはお門違いだろう。身をもってユキハの実力を知れたんだ。喜ぶところだと思うが?」
今まで魔法が一切使えなかったユキハがたった一週間で中級魔法を二つ、しかも詠唱破棄で放った事実にトウヤは悔しさを覚えるがそれ以上に喜びを覚え、ユキハを抱きしめる。
「ユキハ、成長したな! これなら安心してお前らをクエストに連れていける。ゼロ、頼むわ」
「……もう一つの楽しみはまた後でだな。俺は転移の準備をする。出来次第すぐ飛ぶからな」
そんな意味深な言葉を残し去っていくゼロに、マグナは一瞬引っかかるも、短時間で今後の説明を開始した。
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