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転移先は中から冷気が溢れ出ており、一気に冷え込む。その影響かカレンは目を見開き、しゃがみこんでしまった。
そんなカレンにゼロは自身のマントを脱ぎ、優しくかけるとマグナにアイコンタクトを送った。
マグナは全員が収まる範囲の領域を展開し、火気を利用することで外気温と明るさを調節した。
「カレン、すぐに楽になるからな。お前らも洞窟を抜けるまでは俺の領域から出るなよ」
特にカレンの周囲の気温上昇させることで少しずつ動けるようになり、カレンはマントをゼロに返した。心配そうに見つめてくるユキハの視線に気づき頭に手を当て笑い飛ばす。
「ほら、あたし【猫】だから。寒さに弱いんだよ。もう大丈夫だからいこいこ!」
順に洞窟に入っていこうとするところを、突如ゼロはトウヤを引き留める。
唐突のことに怪訝そうな表情を浮かべるトウヤに、ゼロは耳に着けたピアスを取り外しトウヤに手渡した。
そのピアスには白い宝玉が付属しており、その石を覗き込むと中には何かオーラのようなものが渦巻いているのが見える。
「その石は魔石でそれには俺の魔力で満ちている。それを身に着けているだけで俺の魔力を補充して使えるから、戦うつもりなら耳に着けておけ。ユキハにも魔石を貸してるから、お前にもこのクエスト中貸してやる」
「お、おっす。ありがとうございます!」
ゼロの好意に感謝しながらトウヤはそれを右耳に着け、他のメンバーに続き、洞窟内に入っていった。
この洞窟は入り口こそ男性陣はしゃがむ必要がある程小さかったが、一度中に入ってしまうと全員が横並びで入ってもお釣が出る程広く、そのギャップに驚きを隠せない。そして洞窟の壁には所々に蒼く澄んだ石が埋め込まれており、それに魅せられたトウヤはゆらりとそちらに向かっていく。
「トウヤ⁉ トウヤってば! 離れたら危ないって!」
ユキハの声すら届いていない様子に、トウヤの頭にゼロは思い切り拳を落とす。
「あいた⁉ え? 何?」
「正気に戻ったか? あれは魔石じゃない。魔獣の妖力が込められているただの石だ。トウヤ、お前のように妖力で酔わせたところを餌にするためにな。さぁ、くるぞ」
何を言っているのか理解できないトウヤだったが、先程自分が向かって行っていた壁から四体の魔獣が現れた。
サルにコウモリのような羽をつけたその魔獣は縦横無尽に空中を駆け回り、ユキハ達の進路と退路を塞ぐ。初めて見た魔獣という生き物に、ユキハは恐怖し咄嗟に過去の記憶を遡り始める。
「ガーゴイル。音に非常に敏感で群れで行動する。対象の魔力を吸い尽くす吸血能力を有する……怖い」
カレンはユキハの解説を聞きながら満足気に覚醒具を装着する。
「さっすがユキハ。博識だねぇ。でも心配ないよ。だってあたし等がいるんだからさ。折角二人共領域変動と魔力付与を覚えたんだし、実践を見せてあげる。アイリス、解説は任せたよ」
「はい、わかりました。カレンさん、頑張ってくださいね」
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