5人が本棚に入れています
本棚に追加
カレンは詠唱破棄で領域を展開すると、次の瞬間姿を消した。
居場所を必死に探す二人に、アイリスは天井を指すと、そこには半分ほどの大きさになったライフルを構えるカレンがいた。
そこから四発、間髪開けずに放たれた銃弾は、茶色いオーラを纏って領域を飛び出すと、勢いそのまま一寸の狂いもなくガーゴイルの眉間を貫く。
「あんたらの弱点の核はここだよね。この数じゃ暇つぶしにもならないよ」
いつの間にかこちらに戻ってきたカレンを見て、マグナはうんうんと頷いた。
「流石のライフル使いだな。カレンのライフルは俺のマグナムとは違って連射できないから、一発ずつ装填していく必要があるが、そのデメリットを全く感じさせない銃裁きだ。こんな芸当カレンにしかできないって」
マグナがそう総評していると、先程狙撃されたガーゴイルが次々と落下してくる。
ユキハがゼロの背後からそれをおずおずと覗き込むと、狙撃された眉間から黄色いオーラを帯びたツルが生み出されガーゴイルを締めあげていく。
「大丈夫だよ、ユキハ姉。ほら、あれが魔力付与の効果!」
ツルに巻き付かれたガーゴイルは逃れようと藻掻くものの、ツルが光りだすにつれて藻掻く力を失っていった。
「魔力付与……いつの間に……」
「魔力付与と領域展開は基本詠唱破棄で行う魔法です。基本武器にかけて行う魔法ですが、カレンさんの場合銃弾の方に込めてますね」
「へぇ……」
「大丈夫、今はよく見ておけ。このクエストでのお前の仕事はその目で見ることだ。いいな?」
そう言いユキハの頭を撫でるゼロに、トウヤは不服そうに口を尖らせる。
「ゼロ先輩っていつもユキハに優しいっすよね」
その言葉にドキリときたユキハはゼロの顔を見つめると、当の本人は不快そうにため息をつく。
「ユキハは大切な存在だからな。……それにトウヤ、お前にも優しくしているつもりだが? その貸している魔石だっていくらするのかわかっているのか?」
「へ? いくらって……」
モノが不敵な笑みを浮かべ、トウヤにその値段を耳打ちする。モノが告げたその金額にトウヤは固まってしまった。
「これ、そんなに高いんですか?」
「そうだなぁ……お前らが持ってるやつ一つでこの辺の山地一帯は軽く買えるだろうなぁ。そもそもレア過ぎてお金をいくら積んでも簡単には手に入らないんだ。ゼロが五つ、俺が三つ、他の三人は一つずつしか持ってないんだぞ?
めちゃめちゃ便利品だけど、ゼロとユキハ間みたいな同じ属性ならともかく、ゼロとトウヤみたいに違う属性だと壊れる可能性もあるし、ユキハにはともかく、お前にも貸したのは正直俺もびっくりしたぞ」
マグナの説明に改めてトウヤが魔石を見つめていると、ゼロがトウヤに耳打ちした。
「……壊したら殺す」
「こ、壊しません‼」
「ふ、シャレだ」
「怖えよ……センパイ……」
最初のコメントを投稿しよう!