第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「え? えっとゼロ先輩怒ってるんでしょうか?」 「俺があんな勝手したから……」 「ちげーよ。ゼロはそんな奴じゃない。おかしいんだよ。この平原が」   その言葉にハッとしたカレンとモノが覚醒具を装着し、力を解放していく。 「なるほど、確かにおかしいね」 「おかしい? おかしいって何が? めっちゃ空気おいしいじゃん、ここ」 「そう、空気が澄みすぎてるんだよ。人間によってはここにいるだけで気持ち悪くなっちゃうくらいにね。ここにマンティアコアがいるんでしょ? あり得ないんだよ。そんなのがいるとそいつの瘴気で空気は汚れちゃう。ほんと、何、ここ。カレンには何か見える? カレン?」   その声も届かず、固まっているのに気付いたマグナは、カレンを思い切り揺さぶる。 「おい。おい、カレン! 大丈夫か⁉ わかる範囲でいい。現状を教えろ」 「ご、ごめん。正直わからない。とてつもなく大きな力が点在してる。それが何かわからない……こっちを見てる奴がいる!」   カレンはそう言い崖の上を指さすのだが、普段強気なカレンがここまで弱気になるのも珍しく、マグナもまた覚醒具をつけ索敵に集中していく。 「確かに嫌な感じがするな。俺達は一丸となって平原を突破していくぞ」 「え? 怖い敵いるのに戻らないんですか?」 「既に監視されている以上、戻るのは逆に危険だ。それに――」 マグナは振り返り、先程から恐怖で震えが止まらないユキハとトウヤの頭を撫でる。 「大丈夫。お前ら二人は俺達が命を懸けて守ってやる。……行くぞ」   マグナから垣間見える優しさと、それに勝る覚悟を感じ取った二人は力強く頷き返し、一同は歩みを進める。 「いくぞ、モノ」 「おっけー。『同調』」   モノの合図で二人の覚醒具が黄色い閃光を放ち始めた。 「よし、二人とも、これから先絶対俺より前にでるな。絶対にだ。わかったな? よし、いい子だ。いくぞ」   平原を進んでいくと、徐々に草花のサイズが大きくなり、視覚での索敵は困難となる。 そんな中、的確な道を指し示すマグナを不思議そうに思っていると、カレンは二人に今はマグナがモノの嗅覚を共有していることを告げた。 その嗅覚で無事にこの場を抜けることができるかと思われたその時、突如モノは体の奥から咳きこみ、咄嗟に口を手で覆うがその隙間から血が溢れ出る。 溢れ出た血に溺れ、更に強まっていく咳に、マグナは舌打ちし同調を解くとモノを地面に寝かせた。
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