第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「おい! 大丈夫か⁉ すぐ助けてやるからな! 力はもう使うな!」   咳に苦しむモノに、アイリスは治癒魔法をかけ覚醒具を外そうとするが、モノはその手を阻む。 「はは、僕は大丈夫。僕の出番なんだ。ユキハ姉を守れるのは僕なんだよ。邪魔するな」 「モノ君……無理しないで……」 「大丈夫だよ。僕だって獣だから。わがきみはいつだって心配性だなぁ」 「こうなったら隠し通せないか……俺達獣騎士、特に守護者となると人とは外れた尋常じゃない力を持ってる。これはその力の代償だ。モノを寝かしつけてたのも、ずっと背負ってたのもこいつに力を消費させないためなんだよ」 「はぁ、はぁ、にげて」   アイリスによる治癒魔法の影響でゆっくりと眠りに落ちるモノが残した言葉に、カレンが再度周囲を見渡すと、目視できるギリギリラインに五歳ほどの赤髪の少年がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。 「マ、マグナ! あれ……」 「見せろ!」  すかさずマグナはカレンと同調し、カレンが指さした方向を凝視するのだが、それにかかる時間に少年は走ってこちらに向かい、ついにその姿を現した。 「子供? ここ危ないんでしょ⁉ 助けてあげないと! そうでしょ⁉ マグナ先輩!」 「近づくな! あいつは人間じゃない!」   少年に近づこうとするトウヤをマグナが止めたことにより、少年は立ち止まり邪悪な笑みを浮かべる。 「アソボ? ボクとアソボウヨ」   少年から瘴気が噴き出し、体が何倍もの大きさに膨れ上がると、少年は深紅のドラゴンに姿を変えた。 「あれはファイヤードレイク⁉ マグナどうするの? 最上級魔獣は流石にきついって!」 「最上級魔獣……⁉」   絶望し地に落ちそうになるユキハをアイリスが支え、カレンと共にマグナの判断を仰ぐ。 「なーに、あの擬態を見てもわかるように最上級魔獣っていってもまだガキだ。ここは俺が引き受ける。モノを抱いてカレンの指示で逃げろ。ユキハとトウヤは二人から絶対離れるなよ。後は戦闘しないこと。命令だ」   ユキハ達は一斉にドレイクから距離を取り逃げ始めるのだが、それに気づいたドレイクは五人分の火炎球を次々と吐き出す。 同時にマグナもまた火炎を生み出すことで相殺し、五人は十分な距離を取ることに成功する。 「お前馬鹿だなぁ。いくらお前がガキだからって、あいつの為なら俺は良心痛まないからさ。覚悟しろよ? それとも、俺が王龍だって知って牙を向けてるのか? 安心しろ。お前とは俺が思う存分遊んでやるからよ」   マグナの背中から赤い翼が生え、ドレイクの視線の先へ急上昇し、面の下でニタッと笑う。 「天界の龍と、冥界の龍。どっちが強いかな? 行くぜ」
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