第1章:新入生クエストは波乱万丈⁉

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「どうした?」 「ねぇ、カレンには視えない? 前方四十度、約一キロ先!」   カレンは指示された方角、距離を意識し、視力をあげていくと、白銀のドレスを着込んだ少女がこちらを意識しつつ花を摘んでいた。 その少女の存在に守護者三人は覚醒具の下でタラタラと冷や汗を流す。 『ふふ、こっちにおいでよ。お話しよう?』 「テレパシー⁉」   五人の脳内に少女の声が届き、守護者三人は咄嗟に臨戦態勢に入る。 このような特殊能力を持つ魔獣は最低でも上級魔獣とされており、一同の間に緊張が走る。 モノがアイリスの背から飛び降り、威嚇しながら正体を探ろうとすると、少女は手を打ちユキハ達全員を自身の目の前へ呼び寄せた。 「な⁉ 転移⁉」 「みんなの心に呼びかけたはずなんだけどなぁ。中々来てくれないんだもん」   守護者達が警戒を高める中、トウヤは現状を掴めず狼狽し、それを察した少女はトウヤに一輪の花を差しだす。 「お姉ちゃんたちこわーい。優しそうなお兄ちゃんにはこれあげるよ」 「ど、どうも」   トウヤの反応に満足したのか少女は再び楽しそうに花を摘み始めるが、しばらくしてそれに満足したのか視線を上げた。 「ここ、綺麗でしょ? ここは私達一族が暮らす聖地なんだ。さっきからここを荒らしてるのは君たちでしょ? ならその罰は償ってもらわないとね」   少女からエネルギーが吹き荒れ始めると、少女に白銀の獣耳と狼爪、そしてふんわりとした尾が生えた。 「あれは……フェンリルか⁉ あれはダメだ! アイリス。ゼロ兄のところに飛べ! ここは僕が引き受ける」   モノは少女の目前で雷を炸裂させ、それにより生まれた隙にアイリスは全速で飛び立った。 ゼロのいる方角に飛び立ったのだが、こちらに戻ってくるもう一体のフェンリルとすれ違ってしまう。 一発即発かと思われたが、フェンリルがアイリスに攻撃を仕掛けることもなく、お互い何事もなくすれ違っていった。 その様子を見た四人は内心穏やかではなかったが、少女はただ微笑んでいた。
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